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アメフトチームをモデルに、スポーツ改革を

アメフトチームをモデルに、スポーツ改革を

日本の学生スポーツは部活動中の事故などによる健康リスクや、選手の犯罪行為といった法的リスク、適正に処理されていない会計のリスクなど、様々なリスクを抱えています。れらのリスクに対し、アメリカではNCAAや各大学のアスレチックデパートメントが、しっかりとルールを定め対処しています。一方で、これらの仕組みがない日本では、何か問題が起きた時に連盟や学校が場当たり的な処分を科して、その場しのぎの対応をしているのが実情です。

現状を打破したいという思いが強く、スポーツイノベーションカンファレンス(SIC)を立ち上げました。SICはIBMビッグブルー、LIXILディアーズ、法政大学オレンジ、東京大学ウォリアーズ、筑波大学エクスカリバーズの5つのアメフトチームによって構成されています。2017年5月30日には一般社団法人として正式に法人化しました。

今後はSICのメンバー間で安全対策をはじめとしたチーム運営のノウハウやシステムなどを共有し、正しい知識を広く普及するための活動や情報発信を積極的に行っていきます。

▽SIC設立のきっかけ

私がヘッドコーチを務めているIBMのアメリカンフットボール部が、昨年チーム40週年を迎えるにあたって、チーム理念などを一から考えることにしました。どこかとパートナーシップを組んで一緒にやろうと思っていた時に、株式会社ドームさんといろいろなご縁で繋がりました。

2016年の年末ぐらいからドーム社の安田社長と相談を進めていく中で、カンファレンス構想にたどり着きました。経緯としては、法政大が先進的な取り組みでアクティベートしており、LIXILも関係が深かった。スポーツ改革では筑波がすごく進んでいると。そんな感じで連携している時に、「みんな同じようなことしているのだから、1回集まろうか」と言う話になったのです。連携のモデルを作って、それを横展開していこうと。最初からカンファレンスの"箱"ありきで始まったわけではありません。

5チームがとりあえず集まろう。ボトムアップ型で安全対策を進めていこう。安全リスクに関する同意書などのフォーマットは共通化できるよね。一緒にできることいっぱいあるよね。というかたちで話が進みました。2017年に、この活動を進めようと思うのだったら、ちゃんとした組織にする必要があると。アメリカではどうしているか考えた時に、その事例を見習いながら、カンファレンスのような組織にしていこうとなりました。そして、今年の5月に正式に一般社団法人を立ち上げました。「フットボールカンファレンス」にしても良かったのですが、スポーツ界全体にイノベーションを起こすということを発信していきたかったので、「SIC」となりました。

▽オブザーバーの存在

メンバー以外にも、オブザーバーという形でいろいろな方に自由に意見してもらっています。慶応大野球部の大久保監督や、サッカーの人見コーチなど。アメフトに限らず、最終的には同じ志があれば一緒にやりたいです。ただし、まずはアメフトで連携の形を作っていきたい。

法人化したので今後はメンバーシップフィーも増やしていきます。とにかく一番大事なのは、情報をオープンにすることです。メンバーになってくれたら同じフォーマットの安全対策を行い、「SMP」と呼ばれる同じプラットフォームを使ってチームを運営していきます。安全対策ができてないスポーツはやらないほうがいいですが、特にアメリカンフットボールでは安全対策は最重要事項です。日本のチームは問題があることを認識していないか、気づいているけれども学校では課外活動のため、ガバナンスが効いていない状況です。

▽部活動の教育的価値

また、部活は教育の一部であり、学ぶことがたくさんあります。学校が正式な教育プログラムとして、責任を持って取り組むべきです。そうすれば、みんなが安心してスポーツのできる環境になる。指導者は現場で熱心に教えているのに、すべてのリスクを背負わされるだけです。このままではだれも指導者にならなくなってしまいます。何かあったら訴えられるし、満足な報酬も得られない。学生時代に良い指導者に巡り会えるかどうかは、子どもたちの成長にとってとても重要です。良い人材が指導者を目指すという世の中にしていかなければ。

▽安全講習会

SICでは様々な活動を行っていますが、その一つがアメリカの最新の安全なタックリング技術についてのシンポジウムや、高校生向けクリニックの開催です。各チームのやり方もあるので、 頭ごなしにこうしなさいと言うわけにはいきません。「アメリカではこうやっている」という情報提供のスタンスでやっています。まずは指導者の方に理解してもらって、それから学生に伝えるようにするとうまく浸透します。自分自身も指導者ですので、コツのようなことも言うことができます。東京の足立学園が我々の技術を実践してくれて、初めて強豪の早大学院に勝ちました。「クリニックのおかげでタックルが良くなった」と言ってもらったので、素直にうれしかったです。リスクを理解した上で安全面をしっかり担保し、さらに効果的な技術を追求していきたいと思います。

▽SICの将来像

SICは将来的にはその役目を終えて、発展的解消となるのが理想だと思っています。各大学にAD(アスレチックデパートメント)ができていけば、そこから同じような意思を持った大学が集まり、自然にカンファレンスができていくはずだからです。SICが自然発生的なカンファレンスであるのと同じように。

SICとして独自の事業展開なども考えてはいますが、イベントをやろうとすると、必ず協会や連盟との関係性や権利の話になってきます。私も日本協会の一員なので、興行権などをしっかり整理してやっていきたいです。これは日本の学生スポーツ改革において、大きな課題だと認識しています。

▽スポーツの持つ無限の可能性

スポーツには世の中を変える力があると信じています。発信力があって、影響力が大きい。ロイヤリティーを醸成することもできる。産業として大きくなれば、そこに関わり、働く人も増えていきます。今はちょっとしたボタンの掛け違いでうまく回ってない部分があります。アメリカは持っている無形資産を最大化したのに対し、日本のスポーツ界はそれができていません。

日本のスポーツ界のフロントランナーとして、現状を切り開いていきたいです。アメリカンフットボールチームの取り組みだけでは、なかなか変わりません。アメリカンフットボールでいったん突っ走って、それを他の競技に横展開していきたいです。学びながら進化していきたい。アメリカのNCAAがまさにその歴史を経ているので。アメリカには100年以上のスポーツ改革の歴史がありますが、日本は止まったままです。誰かがどこかで始めなければいけない。それがまさに今だと考えています。

(写真提供:IBM BigBlue)

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